新人会計士・若手会計士が絶対に読むべき本 『会計税務便覧』
1年〜3年目くらいの若手会計士に絶対おすすめしているのが『会計税務便覧』。
この本の内容は大きく以下のとおりです。
注目なのが勘定科目ごとに論点と基準が整理されているにという点。勘定科目ごとに監査をすることが多い若手会計士にはむちゃくちゃ便利なのです。
以下ではその理由を紹介します。
目次
監査で必要なこと
勘定科目単位でどんな会計論点があるかを知っておく必要がある
監査はチーム単位で行い、各チームメンバーに勘定科目単位で分担が割り振られ、作業を進めています。
分担の勘定科目はそのメンバーしか見ないので当然すべての論点をくまなく監査していく必要があります。
例えば棚卸資産に関連する論点であれば
- 製品の払い出し単価の計算方法
- 長期在庫の評価方法、低価法評価の方法
- 取得原価に含まれる付随費用の範囲
- 在庫計上されるタイミング
- 原料、仕掛品、製品になるタイミング
- 原価計算の方法 etc
と、棚卸資産一つとってもかなりの論点がありますが、これら一つ一つの論点を理解したうえで漏れなく監査する必要があります。
そして、監査の現場は時間との勝負です。
すべての論点を頭に叩き込んでおかないと限られた時間ですべてを監査することはできません。
現場でひとつひとつ調べるなんてことをしているといつまでたっても帰れません。
そのため、勘定科目ごとに論点を覚えておかなければなりません。
会計基準をベースに説明できる必要がある
クライアントの会計処理に誤りがあったり、新しい会計処理をする必要が出てきたとき、よりどころとなる会計基準をもとに説明する必要があります。
残念ながら「会計士」というだけではクライアントはあなたの説明を信用してくれません。
クライアントに会計処理の修正を依頼するときや、会計処理の方法を説明するときは必ず会計基準を参照して説明しなければなりません。
× 「棚卸資産の評価損の検討が漏れているので、検討のうえ評価損を計上すべきです」
○ 「〇〇の基準上、〇〇(具体的な検討方法)の実施が求められているので、検討のうえ評価損を計上すべきです」
特に若手会計士が説明をする相手は、クライアントの経理部門の若手社員が多いと思います。
その若手社員が会計処理の修正を独断で進めることはなく、上司に説明して判断を仰ぐことになります。残念ながら若手会計士の発言というだけでは、その上司に対する説得力に欠けるでしょう。
クライアントの経理部門の方もプライドを持って仕事をされていますので、よっぽど信頼された会計士でない限り根拠が示されてない説明では通用しません。
会計基準に基づいた丁寧な説明を心がけましょう。
実務で必要な知識は受験勉強で得た知識よりももっと細かい
会計士試験で得る知識はかなりアバウトで、実際に仕事で必要とされるレベルはもっともっと細かい知識です。
ですが、そのすべてを覚えるには量が膨大でコストパフォーマンスの面からお勧めできません。
ですので意識すべきは、会計処理の各取り扱いが基準のどこに定められているかです。
会計士試験の知識はいろんな会計論点の「幹」であるのに対して、実務で必要となる知識は1枚1枚の「葉」のようなものです。そして論点ごとに会計基準のどこを参照するかを整理しておくことで、「幹」と「葉」をつなぐ「枝」が出来上がります。
「幹」が最も大切というのは言うまでもなく、頭の中にしっかりととどめておく必要があります。
逆に、「葉」の部分は必ずしも覚えておく必要はないかと思います。量が多すぎてすべて覚えるには時間がかかりすぎますし。
そのため、必要なときにすぐ「葉」にアクセスできるように「枝」はしっかりと仕上げておきましょう。
やる気がある人ほどすべての「葉」を覚えようとしがちですが、時間が足りません。
よく使う「葉」は何度も基準を読むことになるのでそのうち覚えます。
どのようにこの本を利用するのか
これらを踏まえてこの本のオススメの使い方を紹介します。
読む時の手順
まず読む時の手順は以下がオススメです。
- 自分が分担する勘定科目のところを通読する
- 参照されている会計基準の原文も目を通す
最初のページからがむしゃらに読んでいくのもダメではないですが、担当する勘定科目から読み進めていく方が実際の仕事のイメージと関連させやすくてオススメです。
そして、面倒ですが会計基準の原文まで読んでおきましょう。さっきも言いましたが、クライアントへの説明は会計基準の原文がベースになりますので。
どっちみち修了考査(3次試験)の勉強で全部読まないといけないので今の内からコツコツがんばりましょう!
読む時のポイント
そして、読む時のポイントは以下の3つです。
- 科目ごとの論点を覚えておく
上でも述べた通り、監査の現場は時間との勝負です。勘定科目ごとの論点は街中で突然聞かれても即答できるようにしておきましょう。
- 基準で決まっている部分、判断の余地を残している部分を意識する
これも大切です。
会計基準では「しなればならない」と明確に決められていることと、会社の実態に応じて判断の余地が残されていることがあります。
この必須の部分と判断の部分を意識しておくことで、クライアントに会計処理の修正を依頼するときに絶対に対応すべき部分とそうでない部分がクリアになります。
- 実務上どのようにすれば良いかをイメージする
会計基準はすべての会社に当てはまるように一般化されています。
個別の会社ごとに状況はバラバラなので、自分の担当する会社ではどのように会計基準を当てはめれば良いかを具体的にイメージするようにしましょう。
今の処理はどんなデータ・資料で、どんな計算で作られているか。それが会計基準で決めれている事と整合しているか。不足している部分はどのようなところか。不足を補うにはどのような情報が必要か。
など具体的にイメージしていきましょう。
会計基準の原文に基づいて指摘だけしても、実務的に対応できなければ修正できずなかなか次に進みません。
以上、ながながと説明しましたが、
若手会計士の予習・復習用として、監査現場での辞書代わりとしてめちゃくちゃ利用価値の高い1冊です。この本をボロボロになるまで利用してライバルに差をつけましょう。